Chapter7:遺伝子発現の調節

内容追記ちう

遺伝子調節の概観

細胞の分化は遺伝子発現の変化によるもの

多細胞生物で細胞の型が異なってもDNAは同じである

が,発生の過程でゲノムが組み変わる場合も。とくに免疫系。
植物では分化した細胞も脱分化できる

型の異なる細胞では異なるセットのたんぱく質が合成される

共通部おおい。部位特異的な遺伝子発現を見るには,二次元ゲル電気泳動がいい

細胞は外部からのシグナルに応答して遺伝子の発現を変化させる

外部からのシグナル: ホルモンなど。
細胞の型によって応答するシグナルが違う

遺伝子発現はDNA, RNA, たんぱく質と進む経路のいろいろな段階で調節される
  1. 転写段階のコントロール: Transcriptional Control #たいていこの段階が最重要
  2. RNAスプライシング過程: RNA Processing Control
  3. mRNAの輸送と局在: RNA Transport and localization control
  4. どのRNAを翻訳するか: Translational Control
  5. どのmRNAを不安定化するか: mRNA degradation Control
  6. タンパク質の活性調整: Protein activity control

遺伝子調節に働くタンパク質のDNA結合モチーフ

転写調節。

遺伝子調節タンパク質は、細菌遺伝子の研究で発見された

最初はλ repressorとかlac repressor (lactose があるとON)

DNAへリックスの外側をタンパク質がよむ

二重らせんを開かずに大きい溝を読む。小さい溝より情報量が多い。
メチル基、酸素原子、水素原子、窒素原子の並びかたでAT, TA, GC, CGが認識可能

DNA二重らせんの空間的構造は塩基配列に依存して決まる

AAAANNNが10塩基対間隔で繰り返すと、くねくねおり曲がった状態になる

遺伝子スイッチの基本成分はDNAの短い塩基配列である

20塩基以下の特定配列を認識する

遺伝子調節タンパク質はDNA塩基配列を読み取る構造モチーフをもつ

αへリックスやベータシートで大きな溝に結合する

へリックス-ターン-へリックス (HTH) モチーフはもっとも単純かつ一般的なDNA結合モチーフのひとつである

二個のαへリックスのヌンチャクみたいな。
二量体としてくっついて回文配列を認識したりする。

ホメオドメインタンパクは特別なクラスのHTHタンパクを構成している

発生時の細胞分化に重要とされるHomeotic Selector Gene.
三次構造的にHTHに似ている60aaくらいの部位: Homeodomain

DNA結合Znフィンガー・モチーフにはいくつかの型がある
  • 1対のαへリックス+βシート
    • Cys-Cys-His-HisがZnを捕まえるという構成単位の繰り返し
  • αへリックス2個がZn2個で結合
    • HTH的な構造をとり大きな溝認識
ΒシートもDNAを識別する
ロイシンジッパー・モチーフはDNAの結合とタンパク質の二量体化の両方を媒介する
ヘテロ二量体化により遺伝子調節タンパク質は広範囲の塩基配列を認識できる
へリックス-ループ-へリックス (HLH) モチーフもDNA結合と二量体化を媒介する
遺伝子調節タンパクが識別する塩基配列をすべて正確に予測することはまだできない
ゲルシフト法により、塩基配列特異的DNA結合タンパクを容易に検出できる
DNAアフィニティークロマトグラフィーにより、塩基配列特異的DNA結合タンパク質を簡単に生成できる
遺伝子調節タンパク質により識別されるDNA塩基配列を特定する
クロマチン免疫沈降法により、生細胞の中で遺伝子調節タンパクの結合するDNA部位を特定する

遺伝子スイッチの働く仕組み

トリプトファンリプレッサーは細菌において遺伝子をオン・オフする単純なスイッチである
遺伝子をオンにする転写活性化因子
転写活性化因子と転写抑制因子がlacオペロンを調節する
真核細胞における転写の調節は複雑である
真核生物の遺伝子調節タンパク質は、離れた部位から遺伝子発現を調節する
真核生物の遺伝子調節領域は、プロモーターと調節DNAとからなる
真核生物の遺伝子活性化タンパク質は、転写開始部位におけるRNAポリメラーゼと転写基本因子の集合を促進する
真核生物の遺伝子活性化タンパク質はクロマチン構造を局所的に変える
遺伝子活性化タンパク質は相乗的に働く
真核生物の遺伝子抑制タンパク質はさまざまな方法で転写を阻害する
真核生物の遺伝子調節タンパク質がDNAの上で複合体を形成することがある
ショウジョウバエの発生過程を制御する複雑な遺伝子スイッチは小モジュールから構築される
ショウジョウバエのeve遺伝子は組み合わせによる調節を受けている
哺乳類の複雑な遺伝子調節領域も単純な調節モジュールからできている
インスレーターは真核生物の遺伝子調節タンパクが離れた遺伝子に及ぼす影響をさえぎる
交換可能なRNAポリメラーゼ・サブユニットを用いる細菌遺伝子の転写調節
遺伝子スイッチは徐々に進化してきた

専門化した細胞を作り出す分子遺伝学的機構

DNAの再編成が関係する細菌の相変異
一連の遺伝子調節タンパク群が出芽酵母の細胞型を決定する
相互に合成を抑制する二種類のタンパク質がλファージの細胞内での状態を決める
遺伝子調節回路を用いると記憶装置や周期的変動が出来る
日時計は遺伝子調節のフィードバックループに基づいている
遺伝子群の発現を1つのタンパク質の下に協調させることが出来る
ある決定的なタンパク質の発現により、下流の一連の遺伝子全体の発現が誘発されることがある
真核生物の器官の誘導も遺伝子調節タンパクの組み合わせによる
器官全体の形成にも1つの遺伝子調節タンパクが引き金となりうる
安定した遺伝子発現のパターンは娘細胞へと受け継がれる
染色体全体に広がったクロマチン構造の変化は受け継がれる
脊椎動物細胞分裂時には、DNAのメチル化のパターンが受け継がれる
脊椎動物ではDNAのメチル化によって遺伝子が休止状態に固定される
ゲノム刷り込みにはDNAのメチル化が必要である
哺乳類では、CGに富む”島”に約2万個の遺伝子が存在する

転写後の調節

転写のアテニュエーションはRNA分子の合成を中途で終結させる
RNAスプライシングにより、同じ遺伝子から異なる型のタンパク質を作ることが出来る
RNAスプライシングの発見により、遺伝子の定義の修正が必要になった
ショウジョウバエの性決定は、一連のRNAスプライシングの調節による
RNAの切断とポリA付加部位の変化によるタンパク質のC末端の変化
RNAの編集によりRNAの持つ遺伝情報の意味が変わる
核からのRNA輸送も制御を受ける
細胞質の特定の領域に局在するmRNA
mRNAの5'と3'非翻訳領域にタンパク質が結合して負の翻訳調節を行う
開始因子のリン酸化がタンパク質合成を全体として制御する
翻訳開始部位の上流にあるAUGコドンでの開始により、真核生物の翻訳開始が調節できる
配列内部のリボソーム進入部位による翻訳の調節
遺伝子発現の制御にmRNAの安定性変化も関与する
細胞質でのポリAの付加により翻訳を調節できる
ナンセンス変異によるmRNA分解は、真核生物におけるmRNA監視機構となっている
RNA干渉により細胞は遺伝子発現を休止させる

ゲノム進化

ゲノムの変化はDNAの複製と維持の機構の失敗により生じる
2つの種間のゲノムの塩基配列の違いは、それらが進化の過程で分岐してからの時間の長さに比例する
ヒトとチンパンジーの染色体はよく似ている
ヒトとマウスの染色体を比較すると、ゲノム構造の大規模な分岐がわかる
古代生物のゲノム構造を再構築するのは難しい
遺伝子の重複と多様化が進化の過程で遺伝子系列を生み出す主因となった
重複遺伝子の多様化
グロビン遺伝子ファミリーの進化は、DNAの重複が生物の進化に寄与するようすを示している
エキソン間の組み換えにより新しいタンパク質指令遺伝子ができることがある
ゲノムの塩基配列にはいまだに多くの謎が秘められている
1つの種内の遺伝的多様性から詳細なゲノム進化がわかる