組織の盛衰—何が企業の命運を決めるのか/堺屋太一(1993)

# イノベーション論課題図書

本書の目的
1.日本の組織の現状を認識させ、改革を促す

  • 戦後から脱却し、これからの「知価社会」にふさわしい組織を作り出す

2.この国に組織論、組織学を広める

失敗の責任者はいつもただ一人だが、成功の功労者は限りなく多い

人事圧力下では「何かやる」という暗黙の前提。提案がすべてダメな案であっても、マシなものを「選ぶ」必要がある
現実的 = 目的を達成しやすい。 not 着手しやすい
豊臣家は日本史上最大の急成長組織。ただし人事圧力シンドロームと成長体験への埋没により滅びる。


「組織」という学問領域。手を付けられていない

良い組織の条件
1. 大きさ (フローとストック)
2. 固さ (帰属意識と情報共通性)
3. 強さ(迅速、確実、集中)(目的達成能力の高さ)
これらの「良さ」は相互矛盾する

共同体 機能体
典型 家族、趣味の会 企業、官公庁、軍隊
目的 構成員の心地よさ 外的目的の達成
良い組織の尺度 固さ(団結力) 強さ(目的達成力)
理想の状態 公平性と安住性 最小費用で最大効果
人材評価 内的評価(人格) 外的評価(能力、実績)


織田信長は日本史上最高の機能体(強さ重視の組織)を作った
武士共同体を否定し、「天下を武士が一元的に支配する体制」の実現を目的とした

キリスト、孔子マルクス主義などは、組織統治のうまい参謀がついていた。
一方、自らの名と力で大組織を作り上げ、歴史に残した人は

能力とカリスマ性と組織統治。


参謀とは、情報分析とハウツーのプロ。創造力。常に事を起こしたがる

  • 情報の収集と分析を好み、先見性を養う必要
  • 実現可能な創造力
  • 企画に対する積極性

企画が拒絶されても固執しない。次々新しい案を出す
補佐役は他人と功績を競わない


組織の死に至る病

  • 機能体の共同体化, or vice versa
    • 共同体化した組織は必ず年功序列vice versa
    • 情報の内部秘匿
    • 能力の分散、集中不可能
    • 破滅への美学、倫理の退廃

組織の共同体化を防ぐには、「組織の揺らぎ」を与える。USA軍は20年に一回くらいやってる

  • 環境への過剰適応
    • 恐竜や試験社会に適応した人材は「解きやすい」問題に手を付ける、という例
  • 成功体験への埋没
    • 反例:織田信長。イメージに反して確実な物量作戦を好む。奇襲はたった3回、方法は全て異なり、天丼なし
    • 特殊事情は二度続かない。二度目が起こったら本質的な誤りの可能性

社会の変容
近代の傑作「企業」

日本の組織に変革を強要する三要素

  • 「知価革命」
    • 生産手段と労働力を一体として有している
    • ソフトウェア・プログラマー、デザイナー、弁護士、エディター。
    • 生産は物量ではなく知による
  • 機械情報化(下図)
  • 人口高齢化

これからの組織

  • 経営環境の大変化
  • 三つの神話の崩壊
  • 三比主義からの脱却
    • 前年比、他社比、予算比
  • 「利益質 (quality of benefit)」
    • 外延性(利益が組織の外に延びているか)
    • 継続性(長く利益を出し続けるか)
    • 高感度(その利益を上げることで好感を得られたか)

ハーバードビジネススクールなどの「ケーススタディ」は導入として分かり易いが体系的学問的な思考は育てない