組織の盛衰—何が企業の命運を決めるのか/堺屋太一(1993)
- 作者: 堺屋太一
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 1993/03
- メディア: 単行本
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本書の目的
1.日本の組織の現状を認識させ、改革を促す
- 戦後から脱却し、これからの「知価社会」にふさわしい組織を作り出す
2.この国に組織論、組織学を広める
失敗の責任者はいつもただ一人だが、成功の功労者は限りなく多い
人事圧力下では「何かやる」という暗黙の前提。提案がすべてダメな案であっても、マシなものを「選ぶ」必要がある
現実的 = 目的を達成しやすい。 not 着手しやすい
豊臣家は日本史上最大の急成長組織。ただし人事圧力シンドロームと成長体験への埋没により滅びる。
「組織」という学問領域。手を付けられていない
良い組織の条件
1. 大きさ (フローとストック)
2. 固さ (帰属意識と情報共通性)
3. 強さ(迅速、確実、集中)(目的達成能力の高さ)
これらの「良さ」は相互矛盾する
共同体 | 機能体 | |
---|---|---|
典型 | 家族、趣味の会 | 企業、官公庁、軍隊 |
目的 | 構成員の心地よさ | 外的目的の達成 |
良い組織の尺度 | 固さ(団結力) | 強さ(目的達成力) |
理想の状態 | 公平性と安住性 | 最小費用で最大効果 |
人材評価 | 内的評価(人格) | 外的評価(能力、実績) |
織田信長は日本史上最高の機能体(強さ重視の組織)を作った
武士共同体を否定し、「天下を武士が一元的に支配する体制」の実現を目的とした
キリスト、孔子、マルクス主義などは、組織統治のうまい参謀がついていた。
一方、自らの名と力で大組織を作り上げ、歴史に残した人は
能力とカリスマ性と組織統治。
参謀とは、情報分析とハウツーのプロ。創造力。常に事を起こしたがる
- 情報の収集と分析を好み、先見性を養う必要
- 実現可能な創造力
- 企画に対する積極性
企画が拒絶されても固執しない。次々新しい案を出す
補佐役は他人と功績を競わない
組織の死に至る病
- 機能体の共同体化, or vice versa
- 共同体化した組織は必ず年功序列、vice versa
- 情報の内部秘匿
- 能力の分散、集中不可能
- 破滅への美学、倫理の退廃
組織の共同体化を防ぐには、「組織の揺らぎ」を与える。USA軍は20年に一回くらいやってる
- 環境への過剰適応
- 恐竜や試験社会に適応した人材は「解きやすい」問題に手を付ける、という例
- 成功体験への埋没
- 反例:織田信長。イメージに反して確実な物量作戦を好む。奇襲はたった3回、方法は全て異なり、天丼なし
- 特殊事情は二度続かない。二度目が起こったら本質的な誤りの可能性
社会の変容
近代の傑作「企業」
日本の組織に変革を強要する三要素
- 「知価革命」
- 生産手段と労働力を一体として有している
- ソフトウェア・プログラマー、デザイナー、弁護士、エディター。
- 生産は物量ではなく知による
- 機械情報化(下図)
- 人口高齢化
これからの組織
- 経営環境の大変化
- 三つの神話の崩壊
- 三比主義からの脱却
- 前年比、他社比、予算比
- 「利益質 (quality of benefit)」
- 外延性(利益が組織の外に延びているか)
- 継続性(長く利益を出し続けるか)
- 高感度(その利益を上げることで好感を得られたか)