インクス流!--驚異のプロセス・テクノロジーのすべて


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概要メモ

日本のモノ作りでは「(従来のやり方で)モノが世界一うまくできる」ことが最大の弱点。職人の技能が今以上に進化するか?
日本のモノ作りは量産。量産産業は金型が支える。金型産業の実態は平均年齢50歳以上の中小の金型企業。
いま売れるのは「旬の瞬間、人がまだ持っていないモノ」で、爆発的に売れて一瞬でなくなる。
三次元CAD・CAMの重要なポイントは、二次元→三次元、三次元→二次元の変換を不要にしたこと。
IT開発化を阻む要因。一つは三次元CADの技術的問題だったが、もう一つは金型産業の構造的問題。金型産業の規模は年1兆5000億円*1、7000社の金型企業、うち94%が従業員34人以下の中小企業。

  • 従来の工程を以下の3つに分類。
    • ITでできる工程
    • 機械で行う工程
    • 人間の判断力を利用する工程

さらに意思決定(判断)単位で細分化、マニュアルに落とし、コンピュータネットワークの中に組み込み、設計から物理的出力をひとつながりに。

これまで誰にも何も言わず経験でやって来た仕事を文書化するのは難しい。対話から引き出してやる。
暗黙知は機械産業に留まらない。IT暗黙知、という概念は確実に存在しているに関わらず議論に出ない。原因は、議論の場でIT暗黙知に精通した若者に大きな発言権を与えていないから。
53際の著者より20代の若者の方が神業的に熟練している。

今回の産業革命の本質はITではない。私は製造業の人間である。製造の現場でモノを作っているのはITではない。ITそのものが何かを出力する訳ではない。今日、モノ作りの世界で起きていることは、ITによる生産性の向上であるが、それは、まさに爆発的というべきレベルのものである。
(p.i)

ITエンジンの動力性能=能力とは端的に言えば二つだ。

  1. 素晴らしいデータ生産能力
  2. 瞬時の意思伝達能力

しかし(中略)その動力性能に見合う高度な出力機がなければ、生産性の向上は図れないし、真の産業革命は起こらない。(中略)この200年でほぼ進化を終えて使い込んで来た古いモノ作り機や、古いモノ作り工程、古いモノ作り体制に、とんでもなく強力なパワーを持った最新鋭のITエンジンを、なんとか取り付けようとしている。これが、いま世界のモノ作りを取り巻く状況である。新たな「知的産業革命」が始まろうとしているのである。
(p.ii)

我々は、何か今まで世の中に存在しなかったものを発明したわけではない。ただ、モノを作るプロセスにITを入れて、従来の二次元図面によるとぎれとぎれのアナログ工程を、最初から三次元データで一気に流れるデジタル・ネットワーク工程へと進化させた。その結果、14日かかっていたものが1日でできるようになった。(中略)これは革命である。
(p.61)

これまで重要であった暗黙知が「ない」ことと、新しい神業的暗黙知が「ある」ことは、実は若い世代に置いては表裏なのだと気付くべきだろう。(中略)
若者は静かである。彼らは、いわゆるベテランが、IT暗黙知の重要性に気がついていないことを知っているが、同時に、言っても無駄なことも知っているからである。
(p.183)

革命は起こっている。進化を止めることはできない。まずは、徹底的にモノの価値をなくさなければならない。そのためには、物欲がなくなるほどの生産性を上げることが必要である。
(p.185)

*1:日本の製造業は年125兆円