檀流クッキング

檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)
檀流クッキング (中公文庫BIBLIO)
おすすめ平均
starsおいしいです
stars素敵だ!
stars内臓の料理など
stars知的な知的な料理本
stars「塩少々」であって、「小さじ1/2」なんて記述はこの本になし

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「檀流クッキング」は、読まれる通り、「食通」の自己陶酔などでは断じて無く、味という感覚を通じて繰り広げられる美文のエッセイですらない。徹底的に、市井一般市民のための、タダの家庭調理実作の指南書である。が、結果は、二重の意味において、他に類のない、そしてかけがえのない、手順の指導という以上の啓蒙の役割を、これは果たすことになっている。
1つは、言うまでもない、あらゆる家庭の生活人に、日常の食卓の料理は、自らの手で作りうるものなのだ、また、そうでなければいけないものなのだ、という自信と自覚の手かがりを与えたことである。そして第二、さらに重要な成果として、みずから食い味わうものをみずから「つくる」ことには男も女もないのだ、それをかんがえ、工夫し、語ることには、男にも「恥」などでないことはもちろん、当然として誇るべき人間作業なのだ、という正論を堂々と市民権として認めさせたこと、が挙げられなければならない。この一冊を、特殊な食通の、異常な道楽の告白、つまり檀一雄氏はオカシな珍事にマメすぎる執着を燃やしている奇人なのだ、と読み取ることほど、事の本質を取り違えた大きな誤読は、ない。
(p.242: 解説)

インドでは、ルーをつくって、カレー汁にとろみをつけることをしない。ギーという乳製油とか、植物油とか、椰子の実の汁とかを、たんねんにいためて、とろみをつけるのだが、西欧式だと、メリケン粉で、ルーをつくって、カレー汁のとろみをつけるわけである。
(p.82)

  • チャツネの作り方(リンゴ)

まずニンニクとショウガを押しつぶして、薄く切る。中華鍋のなかにサラダ油を大さじ2,3杯入れ、点火してそのニンニク、ショウガを丁寧にいためたあげく、2,3個のリンゴ(青いものがいい)をスライスして一緒に加え、トロ火で煮詰めてゆくだけだ。
その中にトウガラシを丸ごと2,3本入れておく。だんだん煮詰まってきた頃、レモンの汁を絞り込み、ザラメを入れ、少量の乾ブドウなども入れ、塩をほんの少々と、コップ一杯ばかりの酢を加える。
これらを煮詰めてピリリとからく、甘くて、すっぱい、ジャムみたいなものができあがったら、それでよいのである。
(p.88, 改変)

よく使い慣れたフライパンに、サラダ油とバターを半々くらい入れて、点火する。サラダ油だけで良さそうなものだと思うだろうが、美しい焦げ目は、バターを敷かなくてはうまくうかぬ。
強火である。コショウをしっかりとまぶしつけた側をはじめにフライパンの底にあてて、ジューッ、と焼き始める。箸を使って、僅かに1,2度動かしてみるのはよいが、あまり忙しく動かしすぎたり、裏返してみたりは、よくない。
スライスしたレモンを一個フライパンに投げ込む。そのレモンを半焼けにし、肉に見事な焦げ目がついたのを見届けると同時に、肉片を裏返し、レモンを肉の上に乗っけよう。
火加減を中火に変え、好みの焼き加減に仕上げて、これで出来上がりだ。はじめに焦げ目をつけた側を表にして皿に出し、バターを半焼けのレモンを一緒にして、その焦げ目の上に載せ、クレソンなどを添えて、パクつくわけである。
(p.126)

作ってみたい

  • p.33 大正コロッケ(オカラ)
  • p.86 チャツネ
  • p.98 ローストビーフ(のグレービーソース)
  • p.165 ダイコン餅
  • p.181 アンコウ鍋
  • p.207 焼餅