波のうえの魔術師

波のうえの魔術師
波のうえの魔術師
文藝春秋 2001-08
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Phrase

これまでの一週間、ただ表を書き続ける事に集中させたのは、その感覚を君の中に作るためだ。一見無秩序な数字の変化に過ぎないデジタルの揺れの中から、波動の上げ下げと潮の満ち引きを感覚的に抽出する。それが値動き感覚というものだ
(p.42)

経済考古学の必要はない。経済について学び、知識を増やす事と、実際の投資活動は全く異なる物だ。
(p.48)

投資が楽な仕事なんて、うそばっかり。身体を使わない分、頭とハートはたっぷりと酷使しなくちゃいけない。
(p.55)

おれはせっせと商いの練習をした。月曜日に千株買う。火曜日に感じが良ければさらに千株張り増しし、水曜日に最後の千株をのせる。そして、金曜日にはすべて売ってしまう。もちろん最初の千株で、なにか落ち着かないなというときは、すぐに手じまいした。今度は逆に信用売りの千株から試して行く。損をする事も、得をする事もあった。収支はとんとん。五月いっぱいそんな感じで、自分の手の動きと値動き感覚をあわせる微調整に励んだ。
(p.60)

まつば銀行株63万株のポジションを作るまでに、小塚老人は37回の細かな分割投資を繰り返していた。そのまま株式売買の教科書に使えるような見事なものだ。最大でも一回の投資は5万株だった。それはおれに彫刻の制作を思わせた。あそこを削り、こちらを付け足し、離れてみて、再び全体のバランスを再構成する。(中略)小塚老人の迷いや確信、失敗や手直しが手に取るようにわかった。魔術師は揺れ動く数字の波に感覚をぴたりとあわせ、自分自身の欲望を完璧と言えるほど制御していた。
(p.129)

フローは500兆円、奇跡的に様々な経済対策で年率3%の経済成長を成し遂げても、拡大する総需要は15兆円に過ぎない。対して日本の総資産は、(中略)少なく見積もって約8000兆円に達する。GDPの16倍以上だ。わたしたちはこのストックの運用成績を年に1%上げるだけで、新たに80兆円の富を生む事が出来る。
(p.273)

午前中に新聞を読みこみ、前日の値動きをチェックすると、午後は地下鉄で日比谷図書館にいくのが習慣になった。プロの投資家になるために経済学と英語、それに苦手だった数学を、おれは勉強し直すつもりだった。
(p.287)

memo

  • 1998年08月17日ルーブルが50%近く切り下げられる
  • 1998年08月23日ロシアデフォルト