ソロスは警告する 2009 恐慌へのカウントダウン

ソロスは警告する 2009 恐慌へのカウントダウン
ソロスは警告する 2009 恐慌へのカウントダウン徳川 家広

講談社 2009-06-12
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star期待はずれorz
star偉人の書。2009
starソロスこそ現代最高の賢者だと思う

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Contents

序 『ソロスは警告する』で見通せたこと、はずしたこと
第1章 私の2008年の投資実績
第2章 経済回復への処方箋
第3章 2009年の見通し
第4章 わが新パラダイムの運命

本書の主な内容 from Amazon
  • 「デカップリング」説は間違いだった
  • コモディティ相場の誤算
  • 2008クラッシュを読み解く3つのステップ
  • 不況の規模は大恐慌の倍?
  • オバマがとるべき5つの政策
  • 資産家は円と金に向かう?
  • 不況の「底」は今年末か?
  • 中国の景気回復は早い?
  • ユーロは強くなるのか?
  • 認められなかった「再帰性理論」
  • 注目すべき「行動経済学」と「適応的市場仮説」

メモ

金融市場は均衡点に収斂しない。均衡からの逸脱が起こる時、それは平均値が均衡値と等しいようなランダムな事象ではない(均衡理論の否定)
信用創造と信用収縮のメカニズムは再帰的であり、初期には自己強化的、末期には自己破壊的な「ブームと崩壊」のプロセスをたどる
信用創造に関わるあらゆる期間が規制の対象とならなくてはならない
金融商品は、市場の安定を損なわない、透明性の高い均衡な商品であるべき
世界経済に占める金融部門の割合があまりに肥大化し、かつ金融業があまりに儲かる産業になってしまったことがそもそもの問題だった
BIS規制を8%から6%に引き下げるべきと主張。そもそも8%の根拠なんだっけ
経済を回復させるためには

  1. 資金を創造し銀行に資本注入、不良債権を償却する。
  2. 過剰になった流動性を、信用創造と同じスピードで吸い上げる(こちらが難しい)

すなわちデフレの罠から逃れるには、最初にインフレを起こし、後にインフレの可能性を減らす必要がある。
# 免疫機構。発熱後の冷却。回復一般。回復傾向。

IMFは裁量の2000億ドル以上の資金が必要。1兆ドル規模で発展途上国に貸し付ける。
特別引出権*1(SDR)を発行するべし。
効率的市場仮説、2008年のクラッシュで馬脚を現した。金融システムそのものが震源地。

再帰性理論のモデル化は困難であるという指摘。しかも「当たり前のことを言っている」
進化論を市場に応用した「適応的市場仮説」


BRICs

インドが抱える最大のリスクは政治。パキスタン問題。
中国の景気は2009年半ばには底を打ち、その後回復に転じるだろう
ロシアは「石油利権の上に気付かれたインチキ民主主義国家」


フレーズ

金融工学や仕組み金融などの「金融技術革新」の本当の価値は、怪しげなものだ。それどころか、規制を回避したり、規制を無効化したりするという意味では、結局は有害となりうるものである。
(p.43)

適応的市場仮説は、金融市場を生態系の一種と見なしている。この金融生態系では、参加者達は遺伝子情報の生存率を最大化するべく、互いに異質な戦略を採用して競争し合うのである。そして、この場合の「遺伝子情報の生存率」は、利潤ということになる。これは、生存に役立つならばいかなる戦略も「あり」だとする点で、効率的市場仮説よりも優れている。
適応的市場仮説はまた、モデル化することが可能だという長所をも備えている。しかも、モデルは動態的なものだ。市場参加者の個々の戦略も、ある戦略を採用する参加社の割合も、繰り返しの中で「進化」していくのである。均衡の概念は、再帰性を彷彿とさせるような複数アクター間のやりとりによって置き換えられている。
(p.104)

  • 原論文から引用しよう

私の世界間の中心にあるのは、人間行動--「思考」する主体が「参加」する現象--は、自然現象と根本的に異なった構造を持っているという洞察である。
(p.105)

  • これがソロスの哲学。アリストテレス。哲学から科学。哲学から始まるべきものも存在する。

*1:IMF加盟国が国際収支の変化に際して、自国に配分されているSDRを他の国に引き渡すことで、その国から外貨を入手出来る権利。主要国の通貨を組み合わせた「通貨バスケット」に基づいた合成通貨と見ることも出来る