人間この信じやすきもの


人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)
人間この信じやすきもの―迷信・誤信はどうして生まれるか (認知科学選書)Thomas Gilovich 守 一雄 守 秀子

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回帰の誤謬というのは、単なる統計学的な回帰現象にすぎないものに対して、複雑な因果関係を想定したりしてよけいな「説明」をしてしまうことを言う。
(p.41)

  • 極端に傾けば、次は相対的に平均値へよる可能性が高い、という統計学から導かれる"常識"、ってかんじか

必要なデータの一部しか入手できない事から来る問題点は、常に克服不可能というわけではなにが、多くの場合、困難な事なのである。私たちは、入手できないが重要な情報が存在している事を認める事だけでなく、そうした情報がどのようなものであるかをただしく特徴付けもしなければならないからである。
(p.70)

  • というか、必要な情報がすべてそろっている状態がレアすぎるくらいではなかろーか

ここで、こうした質問*1それ自体が歪みを含んだものであることに注意していただきたい。こうした質問は、私たちの注意を肯定的な証拠に向けさせると同時に、自分が望む結論に反するような情報からは遠ざけるように働くからである。そしてほとんどの場合、質問を肯定する証拠が、少なくともいくつかは見つけられる者であるため、こうした質問を一方の側だけからすることによって、真実であってほしいと思う事柄をたやすく正当化することができるのである。
(p.131)

  • 欲しいものを見る人間。あるがままに、客観的に見るためには、意識的に自然な思考から外れないといけない

私たちはたくさんの信じたいことがらがある。それらが真実であったらどんなにか素晴らしいに違いない。しかしながら、そうした夢のような考えを本当に信じてしまうためには、合理性や認知的な一貫性といった大事なものを代価として支払わなければならない。
(p.142)

  • 理性の方を持ち続けなければならんと。

科学的な予測や推測は、「信頼区間(推定誤差)」と呼ばれる範囲をほとんど常に持っている。(中略)私たちは、この「最悪の場合には」というような表現を伴ったニュースや記事に出会ったときには、信頼区間の一方の端だけを強調して、私たちの注意を引こうとしているのだと考えなければならない。
(p.182)

  • あいまいさを許容できない心理。
  • 「20代-30代、もしくは40代-50代の犯行」

科学においては、ある現象が真のものであると認められるためには、いくつかの実験室において同じ現象が再現できることが要求されるのである。
(p.282)

  • 再現性の問題。

マスメディアというものは、結局のところ、人々の間に広まっている考えを増幅するだけのものであるし、そのためには、聴視者の好みや考えに迎合したものにならざるを得ない。
(p.290)

  • テレビが気持ち悪い理由。この場面はこう感じてほしくて演出しているのだろうというのが見えてしまう。 

誤信を防ぐために身につけるべき習慣の中で、おそらく最も一般的で最も重要なものは、不完全で偏りのあるデータの誤解釈に留意することであろう。このことはすなわち、私たちが日常経験する事がいかに偏ったサンプルであるかを忘れないようにすることである。(中略)
重要な心の習慣の第二のものは、私たちが持つ得意な能力、すなわち、すでに持っている仮説や信念でどんな結果でも説明付けてしまう能力を少しばかり押さえる事ができるような習慣である。私たちはこの後付けの説明があまりに得意であるがために、予想外の出来事や否定的な事実に出会っても、自分の信念に合致するものであるかのように見なしてしまう。
(p.317)

  • 人間個人の限界。うーん。凄い本だ。
2x2因果関係マトリクス

「Aのとき、非Aのとき vs Bのとき、非Bのとき」でマトリクスを作り、どこか一カ所のみに着目しないようにする。比較すべき場所を比較する。


知識

回帰効果
二つの変量が相関関係にあり、その相関が完全ではないときに、一方の変量の両端部分の値は、もう一方の変量ではより平均値に近い値と対応する傾向があること

*1:たとえば「ケネディ大統領の暗殺はCIAの陰謀」説を考えて「どんな証拠がCIAの陰謀説を支持するか」と自問する事