ハゲタカ(上)


最高に面白い。

そして既存の常識が崩れ落ちたとき、新しい価値観とビジネスチャンスが生まれる。そういう意味で、彼は今まさに、三葉が標榜する「国際銀行への進化」を遂げる時が来たと感じていた。
いよいよ俺の時代が来るんだ。不動産担保の有無でしか融資の決定を判断しないなんていうつまらない時代が終わって、本物のバンカーだけが正しく評価される時代が...
(p.18)

船場で中学生時代から店の手伝いを始め、"商いの聖人"と呼ばれた祖父から船場商法を伝授された鷲津は、穏やかで人なつっこい微笑みとまっすぐに相手を見つめる真摯な視線、そして何を言われてもしなやかで上品に答える口調で相手を自分のフィールドに取り込んで、次々と大きな商売をものにしてきた。
(p.26)

欧米の機関投資家だけが投資しているというのは、そのファンドのレベルの高さの証明と言える。投資ファンドの先進国であるアメリカでは、年金基金などが、ポートフォリオの一環としてこうしたファンドに投資をしている。欧米の機関投資家は、日本の生保などとは比べものにならないぐらい投資リターンについては厳しい。そういうところから資金を調達できているというのは、そのままホライズン・キャピタルのファンドの信頼度の高さを裏付けていた。
(p.56)

90年代も後半になって、多くのエコノミスト達は89年末でバブルがはじけたと分析を下した。しかし、その当時それを実感できていた者は皆無だった。その結果、90年代に入り金融融資が激減した銀行は、まだ資産を持っていた個人投資家に走ったのだ。
(p.71)

アメリカ人の悪いクセは、世界で一番優秀なのはアメリカ人だと信じて疑わないことだ。その結果、多くのアメリカ人は日本でのビジネスに失敗する。
(p.149)

利益相反とは、「Conflict of interest」のことだ。(中略)ゴールドバーグが、バルクセールの売り手である三葉銀行のアドバイザーを務めながら、買い手のホライズンとグルになって自らの利を得ようとした今回のディールは、とんでもない利益相反になり、ここがアメリカならば厳罰に処せられる行為だった。
「でも日本ではそれでことが済むんだ。この間、中延さんと利益相反のはなしをしていたら、彼は、『メインバンクだったら、そんなことは当たり前ですよ、今でも』って、何がおかしいのかって顔されたよ。とにかく日本という国は、法律は網の目を大きくして、規制されるべき側の人間が上手に使えるようになっている。(後略)」
(p.150)

確実なキャッシュフローが見込め、債権debtや株式equityが創業者などに集中していることは、「ハゲタカファンド」にとって、もっとも魅力的な案件だった。
(p.231)

チャプター・イレブンとは、アメリカ連邦倒産法の第11章のことだ。会社更生法が債権者重視であるのに対し、チャプター・イレブンは、債権者の保護と再生を主眼にしている。アメリカで企業再生ビジネスが盛んになったのも、78年にこの章をくわえたためだと言われる。
(p.239)

「我々は世間で、ハゲタカと言われているそうですが、本場アメリカのハゲタカにとっては、バルクセールなんぞは駆け出しの仕事です。
あんなものは、金と度胸があれば誰でも儲かるビジネスです。本物のハゲタカとは、潰れかけた会社の債券や株式を安く買い集め、その会社をバリューアップして成功報酬を得る者達を指します」
(p.358)

  • 以前fromdusktildawnさんがハゲタカ記事を書いてた背景をようやく知った

「そして、おらくらは再上場で莫大な利益を得るってわけでんな」
「しかし、それは正当な報酬です。誰もが見捨てた企業を、数年で見違えるようなピッカピカの会社に再生するのです。その報酬としては少ないくらいのものしか手に入りません。しかも失敗したときには、我々には汚名と負債が残るだけです。ハイリスク・ハイリターンとは、本来こういうビジネスを指すんじゃないでしょうか」
(p.362)

「柴野さん、蛇の道は蛇だと申し上げましたよ。あなたがた日本の銀行の方は、外資系金融機関の横暴さばかりに目を奪われていますが、弱肉強食の国際金融の世界で生き抜く最大の武器は、情報収集力です。一つの情報は、時に数億ドルの金を凌駕するほどの価値を持っています。それだけのことです」
(p.401)

日本には、経営のプロも再生のプロもいない。いるのは、一つの企業の中でしか通用しないルールの中で生き抜いて、たまたまトップになったという井の中の蛙だけだ。ならば、これからそういう人たちを育てる必要がある。
(p.402, 鷲津)

アメリカは、自分がなぜ日本に敗れ、そして起死回生のために何をなすべきなのかを徹底的に研究し突き詰めることで、再生の糸口を掴んだ。
それが、「奇跡」と言われた90年代のアメリカ復活を生み、同時に世界にフレンドリーだった仮面をかなぐり捨て、本来あの国が持つ暴力的で傲慢な素顔を晒し始めるきっかけとなったのだ。
(p.425)

ビジネスで失敗する最大の原因は、人だ。味方には、その人がこの闘いの主役だと思わせ、敵には、こんな相手と戦って自分はなんて不幸なんだと思わせることだ。そして、牙や爪は絶対に見せない。そこまで細心の注意を払っても、時として人の気まぐれや変心、あるいはハプニングのせいで、不測の事態が起きるんだ。だから結果を焦るな。そして馴れ合うな。
(p.453)

アメリカの金融機関の良くないところの一つは、自社の名は世界中どこでも尊敬と畏敬の念で崇められると勘違いしているところだ。
(p.457)

知識

簿記で学んだ知識が出て来て面白い。

レバレッジの説明方法(数字)
  • ファンドの資金だけを使った場合
    • 翌年にはファンドが投資した100に対する10%のリターンを加味した110の売り上げが求められる。
  • レバレッジを効かせた場合
    • 90を市場から年利2%で借り、10だけファンド資金を使う。
    • 翌年求められるのは90×2%=1.8%と、10×10%=1%
    • 結果、102.8の売り上げでOKとなる。
不動産の評価

物件が年間に挙げられる収益を、5年間にわたりディスカウント・キャッシュフロー方式によって算出。

不良債権に対する貸倒引当金
状態 貸倒引当金
実質破綻先 100%
破綻懸念先 50%

# 国際基準と、日本の以前の法律でアレやったな

ゴルフ会員権
  • 1903年、ゴルフ場は社団法人により運営。
  • 1957年、文部省は、社団法人の資格がないという見解を発表。
  • 社団法人->株式会社となる
    • 預託金制度による運営が主流に。
    • 償還期が過ぎると返還請求できる。が、バブル期は会員権が上昇、相場で売却した方が儲かった
    • バブル崩壊後相場は暴落、返還請求する人が殺到。
サービサー
  • 1998年10月, サービサー法(債権管理回収業に関する特別措置法)
    • 従来は弁護士に限られていた債券回収が、
    • 規定をクリアした債券回収会社であればOKに