レッドゾーン(下)


レッドゾーン(下)
レッドゾーン(下)真山 仁

講談社 2009-04-24
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鷲津の敗北によって、日本は世界の投資家から「日本は不可解な国。資本主義の常識を裁判所が覆すなんて、あり得ない」と批判され、ジャパン・パッシングの風潮が生まれた。
(p.74)

  • バッシングよりも深刻なパッシングか。

TOBが行われると、株価は上昇する。その上、アカマは、ギリギリまで利益を切り詰める経営方針をあえて緩めて、来期は過去最高益の見込みと発表した。それが、株価をさらに押し上げる一因になっていた。同時に、自社株買いもさかんに行い、上昇を後押しした。このまま行けば、百華集団は資金ショートになるだろうというのが、加地らの予想だった。
(p.105)

  • TOBの最もシンプルな対抗策は企業の価値を上げて行くこと。

「確かに、今や世界は一つの市場原理で繋がっています。たとえば、昨年からアメリカを手こずらせているサブプライムローンの問題は、やがて世界を震撼させると私は思っています。そういう意味では、誰かの、あるいは何処かの国の思惑で動く市場は存在しなくなる。しかし、ワン・ワールドと言いながら、自分のルールを平気で市場に押し付けるやり方こそ、資本主義の成功の方程式であることも事実です」
(p.119)

  • 一番強いのは自分でルールを作っている側か。

メガディールというのは、膠着状態が長く続いた後、何の前触れも無く突然、滝壺に落とされるように激しく動き始める。
だがその激流の中で、いかに自分自身で舵取りが出来るかが、勝敗を決する鍵になる。そのためにも、膠着状態の間にしっかり種を蒔き、見えない糸を張り巡らさなければならない。
(p.171)

  • ディールに限らず、でっかい出来事はすべてそうかもしれん。

「自分たちの長所短所を知ることは重要だ。おのれを知るというのはね、単に自問自答しろという意味ではない。自分が敵ならどう攻めるかまで、自らを突き放して冷徹に分析するという意味ですよ」
(p.192)

  • この視点はいいな。自分が敵ならどう攻めるかか。すぐ落とせるな、うん。

知識

中国は過去に、アメリカの石油精製会社ユノカルを買収しようとしたことがある。後一歩で契約成立という段になって、米政府が介入し、彼らの努力は水泡に帰した。しかも、それが原因で米中関係にもヒビが入った。その二の舞に成るのを中国政府は恐れている。
(p.242)

クラウン・ジュエル
買収対象企業を王冠にたとえ、王冠(クラウン)の宝石(ジュエル)を外して第三者に譲渡することで、王冠を無価値化するという意味。別名、焦土化作戦。